アストルティアの地政学

地政学を知っているとちょっと楽しい


地政学。
このことばをよく聞くようになったのは、一昨年ころ、北朝鮮のおでぶちゃんが核ミサイル実験をさかんに行うようになってからでしょうか。
ニュース番組での、「北朝鮮の活動による地政学的リスクの高まりから、日経平均株価は大きく値を下げ…」みたいなおはなしのなかで、よく登場するようになったのが、この地政学というワードです。

地政学の定義はたくさんありますが、今日のところは、かんたんに

ある国について、「どうしたら世界の中で生き残れるか?」「そのためにはどんな作戦をたてて、どんな国と仲良くするべきか?」といったようなことを、地理的条件をもとに考えてゆくのが地政学ですよ。


と言っておくことにしましょう。

「ある国」という言葉を、とりあえず日本に置き換えてみるとわかりやすいですね。
現在の総理大臣である安倍首相の考えを大まかに説明すると、「いま、日本を襲ってくるもしれないリスクが最も高いのは中国。だから、中国を封じ込められるだけの軍事力を、太平洋上にたくさん持っているアメリカと手を結んで生き残ろう」ということになります。

まずはアストルティア全図を眺めてみよう

それではさっそく、世界地図を広げて、アストルティアの国家群が地政学的に見てどのような状況にあるかみてみましょう。
ポイントは、「地理的な観点から」各国の外交関係や、生き残り戦術を考えることです。

概観

一言で言うとアストルティアとは、どのような地理的構成を持った世界でしょうか。

レンダーシア大陸を、5つの大陸が囲む形になった世界…。
うむ。

6つの大陸が、なんともバランスよく海上に散らばっていて、各大陸は程よい距離感を保っています。
海洋や大きな川、険しい山脈などは「自然国境」と言われ、国家間のついたてのような役割をして、お互いを干渉しにくくします。
アストルティアにおいても海という自然国境が作用し、戦争の起きにくい世界になっているといえるでしょう。

1つの大陸を分け合っている国はグレンとガートラント、グランゼドーラとアラハギーロのみで、ほかの多くの国々は1つの大陸を独占する形になっており、うまく棲み分けが行われていることからも、基本的に国家間の紛争は起きにくい世界であると考えられます。
また、上記のグレン・ガートラント、グランゼドーラ・アラハギーロという組み合わせにおいても、それぞれの国に住む種族は同じなので、種族間対立も起きにくいと思われます。

アストルティアで国家間紛争となりうるリスクは何か

さて、「アストルティアは国家間紛争が起こりにくい世界だ」と書きました。
現に、今わたしたちが暮らすアストルティアは、とりたてて国同士の争いもなく、外交関係もうまくいっているようです。

でも、ごぞんじの通り、アストルティアは過去にいくつもの戦争を経験してきました。
争いの原因はなんだったのでしょうか。


1、地理的な弱みを補強するための侵略



アラハギーロ王国の前身である太陽の王国は今から約2000年前、ジャイラ地方を治めていた夜の王国を侵略することによって領地を広げました。
植物が育ちにくく常に水不足に悩まされてきた太陽の王国にとっては、緑豊かなジャイラ密林は是が非でも手に入れたい土地であったのでしょう。

寒い国は温かい土地を、乾燥した国は湿地帯を求めて侵略を企てる。
これは地政学的な法則の一つです。
リアル世界においても、国土の多くを凍土に覆われたロシアは何度も南下政策を試み、中国や日本、西欧などと敵対してきました。


2、資源をめぐる争い



記憶に新しいのが、ウルベア-ガテリア戦争です。
Ver4.3は、奸臣グルヤンラシュのなりふり構わぬ行動と悲しい運命が印象深いお話だったので忘れられがちですが、戦争のそもそもの原因は、エテーネル・キューブ製造の材料にもなったボロジニウムという鉱資源の争奪でした。

このような、よりよい気候帯への進出を目的とした侵略や、貴重な資源の獲得権をめぐる争いは、現代のアストルティアでも、理論的には起こりうるものといえます。
わたしがグランゼドーラの王だったら、うつろい草が繁茂するエテーネ王国を一刻も早く占りょ……いやなんでもないわ

各国の軍事力と地政学的状況をクローズアップ

それでは、アストルティアの国々の軍事的・地政学的な特色を見ていきましょう。
全部の国を取り上げるのは難しいので、現時点で強そうな国と、今後注意すべき勢力を、無駄な妄想たっぷりに語ってみたいと思います。

兵士の基礎能力がもっとも高そうだが大陸内リスクも孕むオーグリード

オーガ族は恵まれた体格から兵士としての基本的能力が高いと思われ、もっとも戦争向きの民族とも考えられます。



国家としての軍事力も万全です。
武闘王国グレンの部隊はVer4.2でゾンガロンの封印に成功したことで士気が高まっていることでしょう。
南のガートラントには鉄壁のパラディン部隊が控えているほか、大陸北部には修行の聖地ランガーオを擁しており、オーグリード大陸はまさに攻守において盤石の体制といえそうです。

しかしながらオーグリードの二国に関しては、いざというとき本当に手を取りあえるのか?というところにリスクがありそうです。
もうすっかり忘れてましたが、グレン王国とガートラント王国は、ほんの数年前まで一触即発の状態にありました。

およそ60年前、グレン所属の兵士だったオーレンがガートラントの商家から聖杯と娘を奪ったことが発端となり、両国は長いこと敵対関係にあったのです。
さらにマリーン姉妹の陰謀で魔瘴におかされ正気を失ったグレン王は、ガートラントに宣戦布告。



現在は友好関係を取り戻している両国ですが、国民の感情はそう単純ではないかもしれません。
客観的に考えれば、仲良くしておいたほうが良いということがわかっていても、過去に争い合った歴史への感情がじゃまをする。
人間とはえてしてそういうものです。
リアル世界では日韓関係などにこういった状況が見られますね。



グレンは厳しい乾燥気候の国ですから、水源と緑地の獲得が永遠の課題です。
そういった意味では、同じ悩みを持つガートラントと組み、南下して気候条件の良いウェナ諸島へ進出したいところ…。
もしかしたらそんな思惑があるかもしれません。


現時点での最強国グランゼドーラ。エテーネ王国との同盟がカギに

現時点において、総合的な軍事力がもっとも高いとわたしが思っているのがグランゼドーラ王国です。

エテーネ王国を除けば現存する国々の中で最も古い歴史を持つグランゼドーラ王国。
そもそも建国者が勇者であったことから恒常的に魔王軍との交戦を想定しており、軍隊がよく訓練されているほか、勇者アンルシアというカリスマの存在も非常に大きいと考えられます。



国の象徴である勇者、しかもそれが美しい姫君とくれば、民衆はだれもが命を投げ打って彼女を守ろうとするでしょう。
象徴としての神や主君を守るために戦う、という崇拝意識は、私たちが想像するよりもずっと強く、戦場の兵士を精神的に支え、鼓舞するものなのでしょう。
それは遥か昔の宗教戦争や、現人神としての天皇が存在した戦前日本の歴史が物語っています。

またグランゼドーラ王国はその兵力のみならず、各地に軍事拠点を持っています。



城下町の港以外に、レンドアにも海上拠点をもち、さらに南の外海にラッカランを配置してウェナ諸島、メギストリスににらみを効かせ、盤石の体制を敷いています。

しかしVer4.5で突如としてレンダーシア内海に現れたエテーネ王国は、グランゼドーラにとって非常に不気味な存在です。



いきなり湧いて出た謎の古代王国エテーネ。
なんかしらんけどやたら組織化された軍隊を持ち、巨大な城や邸宅を空中浮遊させたり、錬金で人間つくったり、あげくのはてに時を操ったりするスーパー民族が突然レンダーシアの真ん中に出現したのですから、そりゃもう怖くて仕方がないです。

Ver4.5のエンディングでメレアーデはこう言っていました。
「エテーネ王国がアストルティアの人たちに受け入れてもらえるよう頑張るわ」

このようにエテーネが周辺諸国の顔色を窺い、謙虚な態度でいるうちに、グランゼドーラはこの得体のしれない王国と手を結び、ともに外海勢力を牽制していけるよう段取りをするのが賢明でしょう。
そういった意味で、Ver4ストーリーの中でメレアーデとアンルシアが友達になったり、メレアーデがエテーネ村に居を構えたことは、とても大きな外交的アドバンテージでした。



新参者のエテーネ王国もさることながら、グランゼドーラにとってもっとも恐ろしいのは、周囲を取り囲む国々が手を組んで攻め入ってくることです。
ですから、グランゼドーラは他の国よりいっそう、自国の内部統制に気を配らなければなりません。
たとえばグランゼドーラがその精神的主柱たる勇者を失ったり、軍部と王宮が対立して内乱が起こったりすると、周辺諸国はその混乱に乗じて沿岸を攻めてくる可能性があります。

王様もスタンプ押してる場合じゃないよね…と思ったけど、王様、あれでなかなか策士なんじゃないでしょうか。
主人公に、スタンプと引き換えに世界中の情報を集めさせているのですから。

 

技術大国ドルワームが空を制して台頭の可能性も

さて、強国グランゼドーラに対抗できる…かもしれない…王子は頼りないけど、もしかしたら大化けするかもしれない…、そんな成長株と考えられるのがドルワーム王国です。

戦争や動乱の印象が強かったVer4.3ですが、その主役であったウルベア地下帝国、ガテリア皇国はともに滅亡しており、ドルワーム王国には一見、その軍事的な技術は継承されていないかに思えます。

しかし、手先が器用で好奇心旺盛なドワーフ族の血脈は健在でした。
注目すべきは、世界でドルワームだけが保有する、空を飛ぶ技術です。


Ver4.3でウルタ皇女が乗っていた反重力飛行装置
その技術はウルベア帝国の滅亡とともに埋もれてしまったものかと思いきや。

ドルワーム王国が古代遺跡で見つけたらしく、Ver3.0でマイユさんがこれを借りて、いとも簡単に奈落の門までやってきたのを覚えているでしょうか。
あのときはびびりましたね。
我々は苦労して飛竜だの天馬ファルシオンだのをやっと手に入れたっていうのにさ。
まあその話は今はええわ

この後、さらに時が経っていますから、ドルワームでは飛行技術の実用化もきっと進んでいて、

今ならこれくらいのやつ作ってるかもしんないよね ふふっ

ロッキード・ボーイング共同開発の最強戦闘機F22.
愛称はラプター(猛禽)。

こほん。
技術力だけでなく鉱資源、エネルギー資源の豊富なドルワームは根っから戦争の資質を秘めた国なのです。
しかし同時に、他国からその宝を狙われ、戦乱に巻き込まれる危険もあるといえるでしょう。

現代アストルティアのパックス・モンスターナ

こうして各国の軍事力にスポットを当ててみていくと、アストルティアはなかなかの強国ぞろいだということがわかります。

ではなぜ、各国が衝突することなく、現代のアストルティアは平和なのかというと、ひとつの強大な敵に協力して立ち向かわなくてはならない状況が続いているから、と考えます。

冥王ネルゲルの出現に始まり、マデサゴーラの陰謀、終焉の繭。
アストルティアはかれこれ7年近くの間、いわゆる「大いなる闇の根源」につらなる魔物たちによって、常に滅亡の危険にさらされています。
手を取り合わなければ生き残れない時代なので、国同士であらそっている場合ではないのです。
Ver3のおはなしが六種族の祭典から始まったことも、種族を越えた団結が不可欠な時代をよく表していました。



つまり各国は共通する敵の存在によって団結しており、皮肉にもパックス・モンスターナ「モンスターによる平和な世界」が実現している状態と言えるでしょう。

シナリオのバージョンがひとつ終わるたびに、「この世界はいつになったら平和になるのだろう」と思ったりします。
でも、いつか大いなる闇の根源が絶たれたそのとき、世界は「平和とは何か?」をもういちど問い直さねばならないのかもしれません。



〈参考文献〉
『今がわかる時代がわかる世界地図2019年版』
整備堂出版 2019年
『マンガでわかる地政学』
茂木誠・池田書店 2017年
『ドラゴンクエストXアストルティア創世記』
スクウェア・エニックス 2016年

〈参考サイト〉
ドラクエ10極限攻略掲示板
DQ10大辞典を作ろうぜ!第二版