素晴らしき無駄の世界

「楽しんで無駄にした時間は、けっして無駄ではない。」

ジョン・レノンが生前言ったらしきこの言葉を胸に、われわれドラ10プレイヤーはもう6年余りを仮想世界に捧げている。

そうさYOU、6年もの長き時間と、有限なる労力。
楽しんで無駄にしているか?
夢中になれるほど楽しいか?
そこが問題だ。

P1012059

ときにマキ学長は先日、マレーシア出張に出掛けていた。

首都クアラルンプールで開かれた国際ネトゲ恋愛研究機関(通称INLA)の重要な会議に出席するため、というのはもちろん嘘だけどそういうことにしておいて頂きたい。

そしていつの日か現実にそんな世界規模の研究機関が立ち上がるものならば、日本代表の席に座るのはわたしを置いてほかにいないと言える自信がある。
誰かわかんないけど関係者の皆様、そのときはよろしくお願いいたします。

さて、そのマレーシアでマキ学長を仰天させたものとは何か。

家という家、そして駅や図書館や博物館といった公共建物の床、壁、柱、ドーム状の天蓋。
それからとくに人通りが多いわけでもない地味な歩道や、路地裏のキッタナイ食堂で使われる食器にいたるまで。
そのすべてを絢爛に、細密に、圧倒的に、イスラミック・モザイクがうめつくしていた。

P1012018

そこらへんの家
(ペナン島)

P1012060

どっかのお店の階段
(ペナン島)

DSC_0722

投げ売りされていたお皿、1枚60~90円くらい
(クアラルンプール)

なんて美しいのだろう
なんてこまやかで、手が込んでいるのだろう
いったいどれだけの時間がかかったのだろう

なぜ日本の建物や道路にはこういう胸躍る装飾がついていないのだろう。

なぜって、それは、無駄だから!
バアーーーン!

そうだよねいくらカラフルで綺麗でも、生きていくうえで別に必要じゃないよね壁とか床とかの模様なんてさ。

じゃあどうして、イスラムの人々はこんなにがんばって細かいモザイクを作ったの?
それは、イスラム教が偶像崇拝を禁じているからさ。

ヨーロッパには膨大な数の宗教美術がある。
その多くが直接に、キリストやマリアや聖人たちの姿を模写してきた。
磔刑に処されたキリストの姿を彫刻したり、十字架の道行きを修道院の壁画にして語ったり、最後の審判で裁かれる人々を宮殿の天井いっぱいに描いてきた。

西欧の人々はこうして、競って偶像を作ることで、キリストに対する情熱を燃やし、エネルギーを発散することができた。

でもイスラムの人たちにはそれが許されなかったので、そのいかんともしがたい「うおおおすき!すき!まじオレ超信じてる唯一の神はアッラーーー!!!!」という思いを、自然観察と平面幾何とにぶつけまくった結果、このような世界ができたんでござる。

P1011963

どっかの市場の床。
(マレーシア・ペナン島)

P1012106

マレーシア・イスラム美術館の入り口
(クアラルンプール)

P1012137

同美術館の天蓋

P1012135

こういうのみると、モザイクって数学なんだな、って思いますね!
(同美術館展示品)

なくても生きていけるもの、本来生活に必要のないもの。
人間はそういうものを作り出し、磨き上げてゆくことが得意なのだ。

たとえばそれは芸術、たとえばそれは音楽、たとえばそれは、サブカルチャー。
その膨大な無駄の中から、良いなと思ったものを取り出して、6年どころか20年でも30年でも、楽しく過ごせたのならば、それはきっとすばらしいことだ。

人の生は長すぎるんじゃないかと前からひそかに思っていたが、どうやら最近になって我々の寿命はさらに延び、ついに100年にも及ぶらしい。
わたしたちはもう、その気の遠くなるような道行きを、いつでも真面目になんか生きられない。
それならば無駄なことに充てる時間と労力を、できるだけゴキゲンに、そしてできるだけ自分だけのために、喜んで無駄にしてゆくより他はない。

だからわたしは今日も、ドラ10にログインしたら「今日はこれがやりたいぞ!」と思うコンテンツからとりかかる。
日課だろうが限定イベントだろうが良い金策になろうが、「やりたくないな」「楽しくないな」と思うことはやらない。
たとえその「やりたくないこと」を積み重ねたその先に、ステキな報酬が用意されているとしても。

最近、自分にはいまいち合わないかもな~、とパスしてしまうコンテンツがちょこちょこありまして。
ナントカのプリズランとか、ドルボードレースとか。
(こういう系のミニゲームがすべからく下手だっていうのもあるんですけどね…)

運営サン、ミニゲームはこれ以上イラナイヨ!って思っているわけではないんですが、とりあえず「違うな」と思ったら、わたくしはにっこりして、パスしております。

なにごとも、義務になった瞬間、その輝きを失いますからね。
楽しいと思うことだけ、やっていこうと思っています。
ジョン・レノンも、それがいいって、言っていたもんね。