DQX相方文化十年史 Vol.2「2012年~2016年の相方文化」

ちりんちりーんの鐘の声、諸行無常の響きあり。
エテーネのテンスの花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる魚も久しからず、ただ春の夢の如し。
猛きエル子も遂にはおばバレ、ひとへにバギの前の塵に同じ。

「平家物語」より


相方勢のみなさん、相方勢でないみなさんも、いかがお過ごしでしょうか。
人の世は無常、さればむろん、電脳世界の色恋もまた無常。
相方文化もまた時代の趨勢とともに、ただうつろいゆくものでございます。

今日も相方文化十年史、げんきに振り返ってまいりましょう。
本日はDQXがサービス開始して間もない時期の、古代相方文化を学んでいきます。

前回の講義はこちら


もくじ
相方文化史年表(2012-2016)
  2012年|DQXサービス開始
  2013年|第一次相方ブーム
  2014年|衝撃!恋愛漫画連載開始
  2015年|相方スタイルの多様化
  

例によって相方文化史年表からGO!

それではいつものやついきまーす!
みんなだいすき!相方文化タイムラインの続編!!


これね、作ってるときメチャクチャ楽しいんだよね。
載せたいトピックがたくさんありすぎる中で、ヨダレ垂らしながらどれをチョイスするか悩む時なんて至福の極みだよ。
デザインとかも仕事より真剣に考えてます!
というわけでさっそく解説していきます。

2012年|DQXサービス開始 あらたなるゲーム恋愛時代の幕開け


いよいよネトゲ恋愛の舞台はアストルティアへ。
FFXIやモバゲー、mixiといった太古の戦地で浮き名を流し、新天地を求めてアストルティアへ転生した歴戦の相方勢もいたのやもしれぬと思うと、ああもうわたくし、ぞくぞくして参ります。
プレイヤーの恋愛への関心の高さは、サービス開始直後に2ちゃんねる(現5ch)にDQ10あの子に恋しちゃったスレが立ち上がったことからもうかがえます。
このスレは、アストルティア最初期の恋愛文化が記録された貴重な文献資料ですが、本スレッドの最も高い価値はその趣旨にこそあります。
以下、本スレより抜粋。

フレが気になってつらい。
貢ぎも何もなく、ただ仲が良いフレ。
本当は毎日一緒に遊びたい、誘いたい。でも、ウザイに決まってるから、
ついつい野良でどうでもいい人とPT組んで、
「遊ぶ人はきみだけじゃないよ」的な態度をとって空回りしてしまう。

むこうがフレ一覧から、PT組んでるのが見えると、気になって仕方ない。
ログインが気になって広場監視してしまう。
自分でも気持ち悪いとわかってるけど…。
同じような人いないかな。
別に相手がむちゃくちゃいい人ってわけでもなんでもなく、
偶然一緒に遊ぶようになったってだけなんだけど。
本当は全部のクエ、ボス一緒に回るような固定メンバーになりたい。
でも絶対ウザイから言えない。
今日も違う人みつけて遊んでる…。
気持ち悪い自覚があるからあんまり誘ってない。
いったいどうしたらいいんだろ。

2012/9/25 【DQ10】あの子に恋しちゃった【恋の悩み】第一話より

いつも声を掛けてくれる彼が、最近、あの娘と楽しそうに話したり2人きりでPT組んでる
ウェディよりエル♀がいいの?面白くない
あの娘の会話ログが、何だか勝ち誇ってるように見えてイライラする
そっけない態度とっちゃってチームの空気悪くしちゃう、もしかしたらPT会話で何か言われてるかも
こんなのダメだって分かってるのに止まらない

2012/09/30 【DQ10】あの子に恋しちゃった【恋の悩み】第一話より

あー、ネトゲでこんなに苦しむことになるなんて
キャラデリするのは惜しいが
もう苦しすぎて狂いそう(>_<)

2012/10/02 【DQ10】あの子に恋しちゃった【恋の悩み】第一話より


既存ネトゲ出身の歴戦の雄ではなく、生まれてはじめてネトゲ恋愛に落ちてしまった者たちの戸惑いが書き連ねられていることは本スレの最大の特徴であり、魅力でもあります。
初々しく、けがれのない言葉たちは、疲れた日にそっと読み返したくなる名作ばかりではございませんか。

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2013年|初期相方勢の「三種の神器」と第一次相方ブーム


最初期のアストルティアにはスマホツールがなく、冒険日誌、あしあと掲示板、お手紙しか交流手段がありませんでした。
いにしえの相方勢のみなさんはこれら相方勢三種の神器を縦横無尽に使い倒し、相方募集日誌を書いたり、3DSで文通したり、おめあての相手のあしあと伝言板にこまめにメッセージを書き込んだりしていました。
「サポ雇用ありがとう♥ また今度強ボスツアーご一緒したいです!」とか多かったですね。
複数の異性からのあしコメがついていると何かと面倒だから、「あしコメ読んだら消します」なんつったりして。何で消すんだよやましいことでもあるのかよ、って余計トラブルになったりして。
いやいや懐かしい。
そこにはまだmixiやモバゲーなどネット恋愛の先達から受け継がれし、素朴でどこかアナログな香りが漂っておったものでございます。

ワタクシ悪い人間なので、2012~13年頃の相方たちがこぞって書いていた日誌群を、文献資料として多数保管しております。
本日は特別に、それらを参考に私が作成いたしました、当時広場にいっぱいあったテンプレ的相方日誌を公開したいと思います。

こんにちわ~!フレの皆様、ティア楽しんでますか!??? 久しぶりの日誌になっちゃいましたが・・・ (´ฅω•ฅ`)チラッ
今日は緊急!の!ご報告がありますっ!

大切な相方さんから……突然!!!
プロポーズされちゃいましたぁ!!
インしてすぐ拉致られて・・・、
「大事な話ある」って言われて「もしかして?!」予感はしてたけどネッ・・・
゚。゚。゚・:.。..。.:・’♥♥♥’・:.。. .。.:・。゚。゚。゚

さっそくメギの衣装屋さんで純白のドレスを借りて……((´艸`*))イソイソ
これ着て撮影したいってお願いして♡♡
ダーマ神殿の前であらためて……
ココ、ディズニーのお城みたいだよね♬♬
気分は美女とʕ•ﻌ•ʔ野獣(´艸`)ププッ
また怒られちゃいますね~~?!
+♥+:;;;:+♥+:;;;:+♥+:;;;:+♥++♥+:;;;:+♥+:;;;:+

その後は・・・ハネムーン
また私がリクエストして・・・クドゥスの泉へ!GOGO///σ)>ω<*)
膝まくらして~~、って!!
写真撮るの、超ムズかしい・・・

~~~相方さんの顔が、私の足に刺さっちゃうし!!!
日誌で見かけるカップルさんはみんな、お写真上手で ・・・
みなさんどうやって撮影してるのーーー!?!

そして最後は・・・
メルサンディ村の教会で、2人だけで。。。誓いの言葉(๑>ᴗ<๑)★
この教会もフレさんの日誌で見てて・・すごく素敵で。
私もいつか来たいな、ってずっと思ってたから。。(ノω•)テヘ
叶えてくれてありがとぉ!!!!
写真どれも消せなくて保存枚数ががが・・・運営さあ~ん( ;∀;)
♥since2012.XX.XX ..forever…..♥


はいそこまで。
おわかりいただけただろうか…
カメラのフィルターもねえ!
ボカシもねえ!
フレームなんてとんでもねえ!!
そんな何もなかった時代の古き良き相方写真を再現しました。
髪型や立ちポーズも、当時風のものにこだわっております。
 
待ちに待ったはじめての追加ディスク。ついに漕ぎ出した憧れのレンダーシア。
恋人たちはグランゼドーラ城やダーマ神殿で挙式写真を撮り、夜になればアラハギーロで満天の星を眺めました。
当時は今に比べると本当にコンテンツが少なく、暇なプレイヤーも多かったためか、長文日誌も多く、非常に読みごたえのある相方文学が広場を飾っていたものです。
まあ毎日休み時間ごとに新作を読破していた私も相当暇ですが。
というわけでmixiやガラケー文化の流れを汲んだ相方日誌全盛期、時にして2013~2015年頃までを、わたくしは第一次相方ブーム期と呼んでおります。


モバゲーやアメーバピグを取り上げた前回講義において、私はそれらをSNS要素を持ったゲームあるいはゲームもできるSNSと評しました。
私はDQXもまた、SNS性の強い交流重視のサービスコンセプトを採り入れていると考えています。

ゲーム内ではバトルやレベリングをするかたわら、広場ではブログを書くことができ、お手紙や伝言板で個人間の密な交流を深めることもできる。
「プレイヤーには冒険だけでなく交流も大いに楽しんでもらいたい」という制作陣の強いコミュニケーション志向は、ネトゲ史上類を見ないほどの充実した機能として結実しました。
それはすなわちおでかけツールであり、かきおきメモであり、どこでもチャットであり、チャットスタンプでもあります。
「気がつくと冒険そのものよりも、他者との交流がDQXの主目的になっていた」というプレイヤーは、相方勢に限らず、昔も今も、たくさんいるのではないでしょうか。
毎日同じ敵を倒し、毎日同じ試練をこなす、その繰り返しにたとえ飽きたとしても、友の存在が、恋人の存在が、世界を楽しく、離れがたいものにしてきたのでありましょう。

2014年|衝撃のネトゲ恋愛漫画にみるビジネス戦略

2014年、ついにDQX運営は明確にネトゲ恋愛をメッセージとしたビジネスに挑みます。
6月にガンガンオンラインで連載が開始された漫画「ゆうべはおたのしみでしたね」は、なんとDQX内で出会った男女の恋愛をメインテーマに据えたラブコメディでした。


目下、アストルティアでは、周りを巻き込んで恋愛抗争を巻き起こす迷惑系相方勢への非難が高まっており、1月には2ch掲示板に 「痛い恋愛脳を晒すスレ」 が出現したところでありました。
相方恋愛に批判的な機運の中で、連載開始はプレイヤーに大きな衝撃を与え、「スクエニが公式にネトゲ恋愛を推奨するのか」「ゲーム内で連絡先を教え合ってはいけないというルールではなかったのか」と批判的な議論も噴出しました。
しかしそれすらもしょせん、スクエニ社の思惑通り。
作品は賛否を含め大きな関心を呼び、現在も「ゆうたの」は堂々の連載継続中であります。

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第一話のタイトルは「はじまりはパルプンテ」
オガ男使いの女子とプク子使いの男子が、互いの中身を同性だと思い込んでシェアハウスの約束をするというあらすじでした。
この「お互いを同性だと思っていた勘違い」は、さり気ないようでいて、実は本作を世に出すにあたって絶対に不可欠なポイントだったのではないかと私は思っています。
なぜならば「男女の出会いができるゲームなんだ」と視聴者が誤解してしまうような内容にした場合、DQXが出会い系サイト規制法(2003年施行)の規制を受ける可能性があるからです。

しかしその一方で恋愛とは、多くのヒトとカネを呼び込む巨大市場。
出会いを押し出し過ぎてもダメだし、色気が全くなくてもダメ。
ならば、ふたりは出会うつもりじゃなかったのにハプニングで出会ってしまったことにしよう。
「はじまりはパルプンテ」は、考え抜かれた末の折衷案だったのではないでしょうか。
まあ相当無理はあるけどね!!

*「DQXは出会い系サイトなのか論争」はたいへん興味ぶかいトピックゆえに、別途機会を設けてアツく論じたいと思います。
座して待て。

2015年|相方スタイルの多様化と募集ルーム乱立


2015年にVer.3が発売されると、ナドラガンドに久しぶりの強敵コンテンツ常闇の竜レグナードが登場します。
長い間、レベル上げを頑張っても倒すべき敵がおらず不満の溜まっていたプレイヤーが強敵バトルにのめり込む中、相方界にも変化が訪れます。
何度でも戦いを挑んで是が非でも討伐称号を手に入れたい彼氏と、戦闘が苦手でハイエンドバトルなんてやりたくない彼女。
このようなプレイスタイルの不一致が顕在化するようになりました。
この年の冬、おてうさん主宰の攻略サイト「ドラクエ10極限攻略データベース」に 恋愛相談掲示板 が開設されたことも、こうした相方世界の動揺を反映した現象の1つと言えそうです。

同じ2015年、ドレスアップにマイコーデ機能が実装され、格段にドレスアップがしやすくなると、相方勢の中にもペアコーデ派があらわれました。
また、2014年に日本でのサービスを開始した Instagram の影響を受けて写真映えを重視するプレイヤーも増加。相方の世界にも、戦闘派相方勢、パシャ活相方勢、ペアコーデ勢らが割拠するようになり、界隈の多様化が進みました。

広場の日誌にも如実な変化が観測されました。
フレンド募集日誌には「エンドコンテンツ行きません。エンジョイ勢の相方を募集します」「とにかくペアドレアがしたいです」「チームやルーム入ってないぼっちの人がいいです」と、条件や属性を明確にした相方募集が多く見られるようになりました。
また、かねて多数出現していたいわゆる相方募集ルームも、これに追随してメンバー募集に細かい条件を課すところが増え、「ウェディ男とエル子限定ルーム」「30代プレイヤー限定」「既婚者限定」逆に「既婚者さんはゴメンナサイ!」など、おべーら一体何目的だよっつうルームが数多く観察されました。

このような中で2015年頃、定期的に開催されていたプレイべの一つに、相方募集お見合いパーティがあります。相方スタイルの多様化を背景に、遊び方や相性の合った恋人を見つけたいプレイヤーたちが夜な夜な集まり散じた幻のイベントォー!
当時ワタクシ潜入調査を行っておりますため、この貴重な記録をあなたどーせヒマなんでしょ下記からご一読ください。


さて、ゲーム内のコンテンツの数が増えることは、遊ぶ選択肢が増えることであり、見方を変えればプレイヤーを属性別に集合させやすく、ともすると分断を招くことにもつながりました。
もとは同じコンテンツを同じように遊んでいたプレイヤーたちが、それぞれの属性に応じそれぞれの居場所を選ぶようになると、自然、集団どうしの衝突が生じやすくなります。
そのような背景の中で、相方文化を快く思わないプレイヤーたちの批判はますます高まっていきました。
次回、相方文化十年史Vol.3では、空前の相方文化大迫害時代を中心に、2017年~2019年頃の相方界について解説したいと思います。
学生諸君、しっかり復習して次回もキャッチアップしてくれたまえ。

〈参考資料〉
・「ドラゴンクエストXオンラインアストルティア十年史」2022年10月スクウェア・エニックス
「ゆうべはおたのしみでしたね」第1巻ほか 金田一蓮十郎 スクウェア・エニックス
「DQ10大辞典を作ろうぜ!第二版wiki」
・平成十五年法律第八十三号「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に
 関する法律」