やあみんな、ワチニンコ
ドラクエ総合大学のマキ学長です。
まだ5月だっていうのに、もうこんな格好です。
いち早く、暑中お見舞い申しあげます。
さあさあ、
いきなり林真理子先生の小説の抜粋からご覧いただきましょ。
「じゃ、誰なの。いったいどこで知り合ったって言うのよッ」
「パソコンのオンラインゲームで知り合ったんだよ。それで2ヶ月前から会うようになって、行くとこがないって言ったら、それじゃ、うちに来なさいって言ってくれてさァ」
「オンラインゲームですって!」
もう駄目だ。
体がわなわなと震えて、またつい大声を出してしまった。
「それって、出会い系サイトっていうやつなんでしょ。パソコンで知り合って、いろいろ事件を起こすアレよね」
ドラクエ総合大学のマキ学長です。
まだ5月だっていうのに、もうこんな格好です。
いち早く、暑中お見舞い申しあげます。
さあさあ、
いきなり林真理子先生の小説の抜粋からご覧いただきましょ。
「じゃ、誰なの。いったいどこで知り合ったって言うのよッ」
「パソコンのオンラインゲームで知り合ったんだよ。それで2ヶ月前から会うようになって、行くとこがないって言ったら、それじゃ、うちに来なさいって言ってくれてさァ」
「オンラインゲームですって!」
もう駄目だ。
体がわなわなと震えて、またつい大声を出してしまった。
「それって、出会い系サイトっていうやつなんでしょ。パソコンで知り合って、いろいろ事件を起こすアレよね」
(中略)
いずれにしても、オンラインゲームで知り合った、などというのは尋常な出会いではない。
出会い系サイトといったいどう違うのだろうか。
出会い系サイトといえば、売春が目的だったりして、よくニュースをにぎわせている。
ひどい時は殺人だって起こるではないか。
林真理子『下流の宴』より抜粋(2010年毎日新聞社刊)
OKOK、生徒諸君。
言いたいことがあるのはよく分かりまーす。
でもとりあえずは、ネトゲをまったくやらない人々によるネトゲへの印象は、まぁこんなものだということを、覚えておくのは悪くないと思うんだ。
『下流の宴』は2011年にNHKでドラマにもなっていたので、観ていたという方もいるかも。
さきほどの抜粋のなかで「ゲームで女と出会ったですって!」といきり立っていたのはこの小説の主人公の由美子さんという主婦で、ドラマでは黒木瞳さんが演じていました。
このシーンは、高校中退後引きこもりになり、まともな職に就く気配もない20才の息子(窪田正孝)がどこぞの年上の女と同棲を始めたことを知って、黒木瞳さんが面食らう場面。
©NHK
けっして悪い子ではないし、やればできるのにやる気がない、将来の不安も別に感じない無気力な息子。
そして、「努力することこそ人間の価値」「勉強して、大学に行って、いい会社に入ることのみが幸福」という揺るぎない信条を押し付ける母親。
お互いが主張すればするほどどんどん解り合えなくなってゆくふたりが面白いおはなしなのですが、その世代間の解り合えなさを象徴するために林真理子先生が使ったのが、この「ネトゲ恋愛」という若い男女の出会い方。
それこそが今回の講義で、マキ学長が生徒諸君に注目してほしいポイントなんですね。
息子はゲームで異性と知り合うことにこれっぽっちも違和感や後ろめたさを感じないからこそ、「偶然、一緒に彼女と旅をして、彼女の攻撃の仕方が女っぽくなくてさ。やるじゃん、と思ってチャットしたのがきっかけ」とあっけらかんと彼女との出会いを母親に説明する。
それを聞いた黒木さんは烈火のごとく息子を叱る…ことすらできず、「何を言っているのか全然分からない」と顔色を失う。
マキさんが、林先生はやはり凄まじい作家だなと思うのは、この作品が書かれたのがまだネトゲ、ソシャゲの類が世の中で広く知られる前の2009年だということですね。
ドラクエ10もまだ発売されていなかったころですし、むかしっからオタクだったマキ学長でも、そのころはまだオンラインゲームをやったことはありませんでした。
林先生は、この小説を書くにあたって、つぎのようなものをテーマに据えようと考えたんじゃないかと思います。
「世代による価値観の衝突」
「コミュニケーションの失敗による家族の瓦解」
あるいは
「今まで自分を支えてきた価値観を、容易には捨てることのできない人間の姿」
で、そのときに、
「20歳の息子を持つお母さん世代の立場からみて、もっとも自分の子どもにしてほしくない、もっともいかがわしく感じる男女の出会いとはどんなものだろう?」
と、この小説を面白くするために一番効果的な設定を探していったんじゃないかと思うんです。
10年前、まだ今ほどネトゲが世に知られていなかった頃に、当時50代半ばだった林先生はいったいどうやってネトゲ恋愛の存在を知ったのでしょう。
もしかしたら、先生のお子さんや親せきでゲーム好きの人がいたのかもしれないし、お友達から最近の子はそういうゲームをするらしい、という話を聞いたりしたのかもしれませんね。
いずれにしても、生活の中で見聞きしたことを、自分の引き出しにストックしておいて、いざ書くとなったときに作品の効果を高めるための小道具として選び出すことができるというのは、本当に凄いことだなあと思います。
窪田さん演じる息子が彼女に出会ったエピソードの、「攻撃の仕方が女っぽくなくてそこに惚れた」っていうのも、われわれネトゲプレイヤーを十分に納得させるだけのリアリティに富んでいると思いませんか?
ちなみに、ドラマの中で息子の窪田正孝さんと恋人役の美波さんが出会ったゲームは、FF11でもラグナロクオンラインでもなく、たぶんドラマ用に作られたダミーゲームでした。
これです
©NHK
ボス戦で負けそうになっていたズッキーニさんを海ブドウさんが助けてあげたことが二人のネトゲでの出会いだったようです。
NHKさんてば、ダミーゲームとはいえもうちょいクォリティ高めに作っても良かったような気もしますが、10年前だとこんなもんなのかな。
そういえば「下流の宴」ドラマの方には、ドラ10プレイヤーにして、今やドラクエ婚をなされた加藤夏希大先生もご出演でしたので、なにかと因果を感じます。
夏希大先生、めっちゃ性格の悪いお嬢さんの役だったけど、ほんと細くてかわいかったですねぇ…
というわけで、ネトゲがさりげに登場するおもしろい小説のご紹介でした。
自称ネトゲ恋愛研究家であるわたくしめの愛読書を、本書のほかにもいろいろとご紹介しているこちらの記事も、ぜひにご聴講くだされぃ
人気ブログランキング