【第2回:トビアス】宗教・神話からみるドラクエ人物考

どうもマニアックなみなさんこんばんは
マキ学長です

え?きょうもマニアックだよ。
宗教や神話上の重要人物と同じ名前を持つドラクエキャラについて考えていきましょうぞ。

第2回の今日はこの人と遊んであげようと思います。

ドラゴンクエストX、Ver3をもりあげてくださった竜族の神官、トビアス先輩です。

少なからぬドラクエXプレイヤーが、「オレも大概ダメだけど、トビアスよりはマシだわ…」と胸をなでおろしたことでしょう。

とにかくまぁ、トビアスパイセンたらホントに色々と残念な男でして。
プレイヤーの間ではピエロ、噛ませ犬、ヤムチャなどと呼ばれ親しまれてまいりました。
その残念さ具合については後ほど語らせていただくとして…

先に、ちゃんとしてる方のトビアス先輩を紹介しておきましょう。
キリスト教世界でトビアスと言ったらこの人!!

大天使ラファエルと旅したラッキーボーイ、トビアスくん

verokkio tobias
トビアス(右)と大天使ラファエル(左)
(ヴェロッキオ 英国・ナショナルギャラリー蔵)

これは旧約聖書外典のおはなしです。
トビアスくんには年老いたおとーさんがいました。

おとーさんは彼に言いました

「ワシ、たぶんもうすぐ死ぬわー。
でねワシ、死ぬ前に、人に貸してた金を取り返したいのよ。
超遠くてゴメンけどトビアス、ちょっと行って取り返して来てほしーの」

このおとーさんなんですが、どうやったらそうなるのか知らんけど、目に鳥のウンチが入って失明してます。
というわけでトビアスくんは単独、サポなしで見知らぬ土地へ…。
借金とりたての旅をすることになってしまいました。

仕方ないのでひとりでトボトボ歩いていると、いきなり見知らぬ若い男がやってきて、「HEYユー僕も一緒に行くよ」と言い出します。
あろうことかその男はあの大天使ラファエルで、いっきにトビアスくんのパーティはむてきになります。


トビアスと天使
(ゴヤ スペイン・プラド美術館蔵)

途中、チグリス川でおふろに入っていたトビアスくん。
水の中からチャナガブルみたいなでっかい魚が現れてあぶない目に遭います。
しかしここで熟練ハンター・ラファエルの助言を得たトビアスくんはシビレ罠と捕獲用麻酔玉を使ってチャナガをとらえ、剥ぎ取りナイフでかっさばいて内臓を持ち帰ります。
うんなんか別のゲームになって来たけど知らん

そして帰宅したトビアスくんがおとーさんの目にチャナガの胆のうを塗りこんであげると超KISEKI★
おとーさんは視力を取り戻したのでした。

たんのう
盲目の父を癒すトビアス。目に魚の胆のうを無理やり入れてます。
傍らにはチャナガブルの遺骸が。
(ベルナルド・ストロッツィ ロシア・エルミタージュ美術館蔵)

それだけじゃないんだから!
こっちのトビアスくんは超デキル男
もちろん借金も取り返したし、なんとこの無茶ぶりおつかいクエの途中でつかまえた娘と、結婚までしたっつーんだから。
もう言うこと無し、めでたしトビアス。

それではおまちかね!
われわれの愛してやまないドラクエXのトビアス先輩に話を戻しましょう。

竜族の世界ナドラガンドを救うべく旅する主人公に同行し、いろいろと力を貸してくれるはずだったトビアス先輩。
どこへ行っても何をやらせても信じられないくらい駄目で、ことごとく主人公の足を引っ張ります。
以下、トビアス先輩とのすてきな思い出を手短に語りましょう。

【炎の領界】
主人公をさしおいてひとりで炎魔アグニ―スに挑み、ワンパン退場。


【氷の領界】

こんどこそ手柄を先取りしようと、主人公よりも先に洞くつへ向かい、フロスティに凍傷を負わされ退場。

【水の領界】
教義が対立する異教の教団に出会い、同僚の神官エステラが必死に共存の道を探ろうとするも、トビアス先輩は一人で突っ走り、刃傷沙汰に及ぶ。

その後も暴走はおさまらず、主人公を置いて勝手にラストダンジョンに突入。
当然のことながらボスには歯が立たず2度目のワンパン退場。

【嵐の領界】
どうしても主人公に負けたくないトビアスは、またしても単身で翠嵐の聖塔にチャレンジ。
ボスを倒すために魔物を召喚するという最悪の手段に出る。

ボス激おこ、戦場はヒッチャカメッチャカになり、結局主人公が、「ボス&呼ばれた魔物」というハッピーセットをいっぺんに倒す羽目になる。
まぁでもこのバトルは楽しかったからゆるしてやってもいい…いや駄目だ。

ふうむ…。
ドラクエX、Ver3のストーリーとは即ち、ドラクエ史上最高におじゃまだった味方、トビアス先輩の尻拭いの歴史なのです。

そんなわけで、ドラクエのトビアスと聖書のトビアスは似ても似つかない感じです、とほほ。

ちなみに聖書のトビアスくんを描いた絵には、同行する天使が3人になっている珍しい作品があります。


トビアスと3人の天使
(ボッティチーニ 伊・ウフィツィ美術館蔵)

この絵では、聖書に書かれていたラファエルの他に、ミカエル、ガブリエルまで登場して三大天使そろい踏みの豪華4人PTになっています。

ミカエルさん(左)はわりと手荒な天使で、気に入らないことがあるとすぐ剣で斬ります。
鎧を着ていますし、なんだか戦士っぽいでしょ。
中央のラファエルさんのドレアはまるで旅芸人の装束。
ガブリエルさん(右)も、なんか魔法使いっぽい。
うむ、見るからになんかみなさん頼もしい感じがします。

この絵の中で3人の天使に囲まれたトビアスくんを見ていると、ドラクエXのトビアス先輩の姿がちょっとだけ重なるような気がしてきませんか。
へたれだったけど、主人公や、エステラら、強くて優しい仲間に囲まれていたトビアス。
みんなの足を引っ張りながらも、いつだって「しょうがないな~もう…」って助けられ旅をしたトビアス。
そして、最後には力をあわせて世界を救った、愛すべき名脇役トビアス先輩の姿が。

〈参考文献〉
●『鑑賞のためのキリスト教美術事典』
意外にも中身はマンガ形式でおもしろい。学長オヌヌメ
2011年・視覚デザイン研究所
●『西洋美術で読み解くキリスト教』
2011年・宝島社