ドラクエアイテム研究レポート2「カギのない夢を見る」


『鍵のない夢を見る』は作家・辻村深月さんの短編集で、2012年に直木賞も受賞した作品。

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じつは天外魔境とか女神転生シリーズをけっこうやりこんでいるというゲーム好きの辻村さんに、身分違いの親近感もおぼえつつ、すらすらっと気軽に読み切れる短いストーリーが5篇収録されているのです。

でもここに出てくるお話たちは、どれも、すごくこわい。

近所に空き巣に入る窃盗癖が治らない主婦、恋人に暴力を振るっては泣きながら手当する男、ワンオペ育児に疲れたママが行きついた狂気の沙汰。

どの小編も他人事のように読んでいる分にはいいけれど、よく考えたら自分には未だ起こったことがないだけで、今起こったとしても特におかしくないような話だから、こわい。

主人公たちは全員けっこうキちゃってる人たちだし、それぞれ、状況的にもけっこう追い詰められているんだけど、誰だって、わたしだって、ちょっと不運が続いたり、それに対してヤケを起こしたりすれば、すぐに手が届いてしまいそうな領域ではある。
だからこわい。

そして一番こわいのは、その恐怖の迷路には、脱出するための鍵がないということ。

傍から見れば、ほんのわずかな工夫や努力で迷路を抜けられそうなものなのに、主婦も、DV被害者も、本人にだけはどうしてもその鍵は見えない。
本当は、見たくないのかもしれない。

すぐそこにある鍵を手に取ろうともせず、悪夢に囚われてもがいている人を見ては「ばかだな、何してんだ」ともどかしい思いをしつつ、しょせん他人だし、と放っておいたりしている。
そういうことって私たちの日常にも往々にしてあるから、それがこわい。

そんな作品です。
非現実感のないライトな設定とカラクリは、ガッチガチに作り込まれた推理小説はちょっと苦手という人にも良いと思う。
ぜひ(笑)

という、ステマがしたかったわけではなく、ドラクエの話をしましょうか。

ドラクエのストーリーに、というかゲームをクリアするために、カギはなくてはならない存在ですね。
カギがないと、世界の次のエリアに進めなかったり、重要アイテムがゲットできなかったりします。

ドラクエ初期の作品であればあるほどその傾向は強くて、わたしたちはいつもカギを探しているし、カギを手に入れるためならファラオの呪いもおそれずに古代の墳墓を盗掘するし、カギを開けた扉の向こうに広がる未知の世界を知るためなら何だってする。
だからカギのない夢なんか見ない。

で、ドラクエは、まず、カギの名まえがいいですよね。

わたしはすいもんのカギとかろうやのカギみたく、目的を具体的に表した名まえよりも、Ⅲ以降に登場したとうぞくのカギ、まほうのカギ、のように、抽象的で謎めいた奥行きを感じる名まえのほうが、好きです。とうぞくのカギ、まほうのカギ、さいごのカギ。
この3段階の名づけは、とってもおみごとだなあと思ってしまいます。

 

ドラクエⅢ、ナジミの塔ではじめて手に入れたカギはとうぞくのカギ。
とうぞく、というチンケで俗っぽい名まえは、さらに上位のカギの存在を示唆している感じがあって、子どもだったマキさんはカギを手に、とってもわくわくしました。

まほうのカギのむらさき色の文様が刻まれた扉、とくにロマリアからポルトガへと続くほこらにあった扉は、これをくぐれば冒険が次の次元へ進むんだ、という期待感があって、それはもうマキさんはがんばってレベルをあげたもんです。

ここでマキさんの、まほうのカギの思い出みせちゃいます。

勇者も武闘家も僧侶も魔法使いも、みんなレベルは20をこえたのに、ピラミッド内をうろつくモンスターにかなわなくて、マキさんのパーティはカギのある場所にたどり着く前にぜんめつしてばかりいました。

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さらにレベルをあげて何度挑戦しても途中でMPが尽きてしまって、わたしはどうしても魔法のカギを手に入れることができないでいました。そのことを、学校で当時好きだったマコト君に話すと、
「ソフト持ってこい。おれがカギとってやるから」
と言ってくれました。

 

マキさんは先生にばれないようにないしょでドラクエⅢを学校にもっていきました。
かばんの中でソフトの中身がカラカラ音を立てるたびに、ぼうけんの書が消えてしまうんじゃないかとハラハラしました。

2、3日経って、マコト君からドラクエⅢが戻ってきました。

開口一番、彼は「お前アホか」といいました。

なにがアホだったのかというと、当時のマキさんは装備のシステムを理解していなくて、武器屋、防具屋のたぐいを全スルーしてイシスの城まで旅をしていたのです。

マコト君によれば、
「勇者レベル23、武器ひのきのぼうってお前!」

はぁ…
そう言われてもよくわからないマキさん。

「武闘家にいたっては素手ってお前!」

彼がなんのことを言っているのかまったくわかってなかったのですが、ともかくも、困っていたところを好きな人に助けてもらったのだということに気を良くし、マキさんはドラクエⅢをもってお家に帰りました。

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「つ、つええー!」
ドラクエのスイッチを入れてさっそくフィールドに繰り出し、マミー相手にはがねのつるぎを一振りした勇者の鬼神のごとき破壊力。
マコト君は裸一貫だった勇者一行に、その時点で一番強い装備を買っていてくれたのです。

装備は裸同然だったけど、やみくもに敵と戦いまくってはいたのでレベルはとうにピラミッドの標準レベルを超えていたマキさんの勇者ご一行は、その後船をもらって大海に漕ぎ出ても、ジパングでやまたのおろちが牙を剥いても、当面、向かうところ敵なしでした。

フハハ。

 

ドラクエ10をやっている今でも、新しい武器防具を買うたびに、わたしはこのときマコト君に怒られたことを思い出します、きゃっ。

「ぶき、ぼうぐは、もっているだけでは いみがないぞ!っていう町の人の話をお前は聞いてなかったのかよ」と。

うーん、よき思い出。

カギにはやっぱりドラマがありますよねドラマが。
最近のドラクエ作品はカギの存在感が薄いものが多くなってきたけれど、やっぱりこういう「カギのある夢」が見たい。
マキさんでした、きゃっ。

 

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