共演NG

テレ東で放送されてたドラマ、「共演NG」が先日、最終回になった。
わたしは数年前に突然いきり立ってテレビを売り払って以来、連ドラを追いかけて観ることはほとんどなくなったけれど、「共演NG」、面白かった。

主人公の二人(鈴木京香・中井貴一)は過去に交際していて破局した事情から、共演NGの俳優どうし。
さらに決裂した師弟関係のじいさんとおっさんが、共演NG。
あともう一組、すごく仲の悪いアイドル二人が共演NG。
さらにまだ出てくるけど忘れた。

TV局のたくらみで、共演NGのキャストばっかりを集めてドラマを作ることになった…という設定で、当然ながら登場人物全員が揉めまくってすったもんだする内容です。
よくこんなこと考えつくな、というか思いついてもいいけどよくぞ実行したな!と思ったらば、脚本が秋元康で、なるほどやりおったわ。
さすが湾岸戦争が始まった時も唯一「ムーミン」を放送していた局は違う。

そういえば最近、図書館でふと目についた本があった。
表紙に、信じられないことが書いてあったのだ。
私はいったん通り過ぎた後に、「うそでしょ、そんなわけがない」と思って取って返してその音楽雑誌を手に取ったら、「特別対談!小泉純一郎×志位和夫」と確かに書いてあって身震いした。
いったい誰だ、こんな危険な対談やろうって言ったのは。

だけど記事を見ると、本来絶対に共演NGなはずの右派と左派の雄は、なごやかに笑いながら、モーツァルトはあの協奏曲がいいねとか、シューベルトなら〈未完成〉だよなとか、お互いの音楽趣向について至極平和に語り合っていた。
さらにそれぞれヴァイオリンとピアノを弾けるんだから「一緒になんかやろうよ」「やだよ」とか楽し気に言い合った挙げ句、小泉さんは「音楽や文化は、自民党だろうが、共産党だろうが関係ないからね。国境も越える」とか言っちゃう。
もうどこまで本気なのか、見てるこちらは本当に怖い。
けど、こういう怖いものを見たい、業界の古いタブーを誰か取っ払ってスカッとさせてほしい、というのは、わたしたち鬱屈した視聴者の、秘めたる願望なのかもしれない。

で、私たちアストルティア民が最近目撃した共演NGといったらこれである。



「どうして、あなたが大魔王なの」
あのさアンルシア、魔界に力を貸すことにしようと思うんだけど、君はどう思う…?
初動段階で主人公が勇者姫にひとこと相談していれば、彼女をあんなに驚き悲しませる共演をせずに済んだのに。
アストルティアに生を受けてからずっとそうだけど、というかドラクエの主人公は伝統的にそうだけど、剣術にも魔法にも長けたスーパー人類であるこの主人公、コミュニケーション能力だけは5000年前に置いてきてしまったらしい。

「おいお前、そんな重要事項を黙っておくんかい」と思ったことは、これまで一度や二度ではないのだ。
ナドラガンドの闇の領界で、自分のきょうだいがマイユを奪っていこうとしたとき、サジェやエステラに「あれは自分の身内だ」と説明することを怠った。
魔界に来てからは、ペペロゴーラ君やヌブロ長老におしみなく協力しておきながら、彼らの敬愛する先代大魔王を葬ったのは自分だという重大な真実について、いまだ知らぬふりを決め込んでいる。
なんて恐ろしいやつ。

けれどたとえ事前に説明したとして、魔族とは人間を何度も危機に陥れてきた絶対悪であるという、確立された二元論の中で生きてきた者たちを動かしがたいことは自明でもある。
既存の正しさに縛られて動けない人々の目を醒まさせるには、説明するより先にタブーを破ってみせるしかないような気もしてきた。



若いプレイヤーだともはや知らない人も多いかもしれないと思うと体にささやかな震えが来るが、思い出してみるとスクウェア・エニックス自体が2003年にスクウェアとエニックスという誰がどう見ても共演NGだった2つの企業が合併して生まれた会社だった。
ドラクエを不動のブランドに育てつつも、他タイトルに乏しいことが不安要素だったエニックスと、血気盛んなクリエイターを擁しFFで猛追しながらもとにかくお金がなかったらしいスクウェア。
常に比較され、相容れない存在と思われ続けてきた2社は水面下で見合い話を進めていて、ある日突然結婚を発表して全国のFF・DQファンの後頭部をぶんなぐった。

まさに「どうして、あなたが、大魔王なの…?」という気分で、「どうして、相手がスクウェアなの…?」「よりによって、エニックスなの?」と、わたしたちは長年のファンと言ってもしょせん外野でしかないことを思い知らされて悄然とした。
いつの間にか進められていた協議は堀井雄二すら聞いていなかったらしい。
やはり固定化した常識を侵すには、めんどくさいこと言いそうな周辺を完膚なきまでにほったらかしにして、そしらぬ顔してさっさと大魔王になってしまうしかないのかもしれない。

過去だれも考えたことのない、絶対ありえない、やっちゃいけない型破りが、きっとこれからもっとたくさん起こるだろう。
この世界でも、あの世界でも。


参考資料
テレビ東京「共演NG」公式サイト
「特別対談! 小泉純一郎×志位和夫」『音楽の友』2020年11、12月号
堀井雄二氏×日野彰浩氏【平成最後の日本ゲーム大賞特別対談】2019年7月17日 ファミ通.com